1995-01-01から1年間の記事一覧

朝。

朝の光は霞んでいた。けれど大きくて投げやりで、本当は綺麗で、嘘の匂いがした。内面を研ぎ澄ました、圧倒的な嘘。優しそうにさえ見える大きな虚像。 みんな死んだようになっていた。不本意に起き、不本意に行動する人と町並み。まだ布団の雰囲気を皆が体に…

長い睡眠から目が覚めたような気分だった。けれど、実際に眠っていたのはほんの数十分で、変な気分だ。体が寒いし重い。けれど、視界は妙にはっきりしている。けど、頭は回らない。 窓の外は、もうすっかり知らない街だ。暗い暗い世界にいくつかの眩い明りが…

本当にすきだ。しみじみそう思った。東京の空を貶す奴は、バカ。上を向いているので、マフラーがずれて、首元が寒くなった。それを上を向いたまま直す。 「いつになったら君は真っ直ぐ向いて歩いてくれるんだ。」 ぽちぽちと携帯を打ちながら(つまり、下を…

朝、あんまりに暑くて僕は窓を開けた。外から気持ちいい風は入ってきたけど、僕はそんなことあんまり気付かなかった。 だって、雲が地面にあった。 驚いたけど声は出なかった。起き抜けのだるさのせいだろう。 「結花、雲が地面にあるぞ」 朝ご飯を作る彼女…

ぽちと共に。

最悪な気分だ。 イライラする。口寂しい。 何が楽しくて禁煙なんか始めたんだろう。 私は部屋の中に充満していたあの霞みの様な白を思い浮かべて、 今すぐにでも引き出しに閉まったセブンスターを取り出そうかと思った。 でも、そんなことしたら、禁煙は中止…

「ねぇ、知ってる?」 ちょっとだけ、上目遣いを心がけて、私は少し背の高いその人に話しかけた。その人、推定28歳。容姿、微妙、あと一押し。性格、微妙、あと一押しっていう感じはするけれど、結構好き。そんな人、名前、よく知らない。 「何?」 素っ気無…