久しぶりに本を読めていい感じ!
ジャン=フィリップ・トゥーサンの『カメラ』。物凄く、日常の描写が多いけれど、退屈しない。むしろ、惹きつけられた。主人公の『ぼく』の言葉は、私が噛み砕けなかった思いを表現してくれた。自然に、スタイリッシュに。生きることの困難から、存在する事への絶望。か。そうか、そういう表現で、沢山の人の抱える絶望を表すのか。
そして、『ぼく』の恋人のパスカルの、『根っからの、持って生まれた疲労感』は、最高。そうか、もしかしたら、ある種の人間は、疲労感を持って生まれるのかもしれない。いつでも眠たくて、元気が無いわけではないのに、どうしても疲弊してしまう。それは他の人にも無い、特定の人間の持つ、不思議な特徴。それが、物語の中だけではなく、現実にもいそうな気がしてならない。


『一人閉所に立てこもって、自分の思考の流れを追いながら、ほっとした気分が生まれるのを感じる時、人は徐々に、生きることの困難から、存在する事への絶望へと移行するのだ。』