最近毎日が日常じゃない。日常に立ってみて思った。日常さえ日常じゃない。
最近異様に喫茶店にばかり行っている。いつも同じような、チェーン展開されている小奇麗な喫茶店。安くて不味いコーヒー、すっかり顔を覚えてしまった店員。その中で、私は意識の中にダイブする。横には常に本があって、当然の如く煙草と灰皿がある。そこで必ず私は、私について考える。どんな本を読んでいても、だ。



正直、困惑しているのだ。まだ。
私は私が見据えている自分だけを、自分だと信じようとしているけれど、周囲は私をそんな存在だと認識しない。私は、正直自分が思うよりも数倍、女としての価値があって、自分が思うより数十倍、下衆な女だった。娼婦とか、そういうの、向いている気がする。きっと一瞬一緒にいるのには都合のいい女だと思う。外見は優しそうに見えるらしい。素朴そうでもある。
けど、私の知っている私は、もっと冷たくて斜構えで、結構強かなのだ。そして、女としてのプライドも、汚れた感性も持ち合わせてしまっている。人格は顔に表れるというから、私は必死で明るい笑顔を取り戻そうと沢山作り笑顔を研究する。そこが、汚れた女のプライドなんだってば。カマトト、だ。ええい、なんでもいい。そんなのでもいい。



新宿でも、浅草でも、中野でも、地元でも、夜はネオンがきらきらしている。汚れたアーケードも、光に照らされてきらきらする。ワンダー・ランドだ。ここは。私はアリスになって、毎日を歩いている。不思議な人々に出会って、振り回されて、そして、どこかに流れつく。アリスより数倍汚れた現実のワンダー・ランドを泳いでいる。私は今、日常にいない。私の周りは、もうしばらくどこにいたってワンダー・ランドなのだ。いつかは目が覚めて、木陰で昼寝をしていたことに気づけばいい。その時に、私は少しだけ純粋さを取り戻していればいい。



けれど。私は常に今、終わりに向かって歩いている。寒くなってきた。だからそろそろ終わりが来る。18歳の終わりも、そろそろだ。やっと18という数字の呪縛から逃れる。19は、どうなっていくんだろう。分からない。けれど、今よりも子供っぽくいたい。いつか、私は全てを許される年齢になる。喫煙も、飲酒も、男遊びでさえも。そうなったら、私はどうなるのだろう。私は18が気に入っていた。そこから抜け出たくない。



それと同じように、ワンダー・ランドからも抜け出たくない。その事も知っている。生きている事をしっかりと自覚できるワンダー・ランド。歩くだけでわくわくしたり、何かに気づいたり出来る、ネオンの中のように、私は18歳と煙草と酒とコーヒーが、そういう下衆な世界が、自分の世界になることを恐れながら、そうなっていく。日常はいつ訪れるのだろう。怖いけど、楽しみだ。



生きて行く毎日が、怖くて、時に死を垣間見る瞬間が、楽しくて、官能も純情も、眠りも安らぎもコーヒーも自殺を考える瞬間も。全て、嘘のようなワンダー・ランド。生きているワンダー・ランド。ただの衝動の世界、でも、リアルな衝動の世界。制服を着ていた私は一年も経たないうちにここにいる。見据える世界は形をゆがめて、暖かく光る。きっと今ならどこまでも、行ける。