眠い。本当に眠い。つい数分前まで、バイトの友達の友恵ちゃんと話していた。因みに今は、朝の四時も半を過ぎている。私はうんと彼女が好きなのだ。そして、沢山嫉妬しているのだ。でも、大好きなのだ。彼女について書かずにはいられない気持ち。




私の癖。それは人を褒める事だ。それは素晴らしいという人もいるし、実際喜ぶ人もいる。ちょっとうざいくらいに。
褒める心の裏には、きっと逆に自己を顕示したいとか、褒める事によって自己に浸りたいのだ、とかそういう話もあるけど、それは、また、別の話。
友恵ちゃんは褒めても確実に喜ばない。確実に否定する。そして嫌がるのだ。どうしてそんな事いうの、と。




実際、本心から褒めたいくらい、本当に素敵な子なのだ。
私が本当に混乱している時に、沢山の話を聞いてくれた。私が暴れて家を飛び出したときの話だ。泣きながらふらふらと歩いていると、偶然友恵ちゃんに会えた。そして、めそめそ泣く私を家まで連れて行って、泊めてくれた。沢山の話を聞いてもらい、沢山の楽しい話も聞かせてくれた。
それだけじゃない。仕事においても、彼女はとても気が利いて、すばやい。疲れても笑顔を絶やさない。凛としている。
また、もうひとつの私の癖、すぐに『ごめんなさい』をいう事を叱ってくれたのは、彼女がはじめてだ。それはよくない、聞いてる側にも、言ってる私にも、と。どれだけ素敵なのだろう彼女は。
けれど、あの子はすぐに褒めると否定する。自分はそんなに優しくないし、しっかりもしていない、と。めげずに褒める私も相当うざいだろうなぁ。




今日は二人とも飲んだ後でほろ酔い。いつもは私が先にぐだぐだになるのに、今日は彼女の方が先にくたりとなっていた。その瞬間だ。酔ってない側は、酔った人の話を聞ける。今日はそんなんで、友恵ちゃんの話を聞いていた。二人で公園のジャングルジムに登って、てっぺんでわざわざ膝抱えながら。何を聞いたか、眠すぎてよく思い出せないけれど、彼女はずっと、自分を否定していた。私がどれだけ褒めたとしても。
あの子はよく誰かの聞き手に周ってしまう。バイト先での彼女の聞き役度は高い。しょっちゅう、色んな人の話を聞いて、重い話も沢山受け止めていた。
そんなこんなで彼女、バイト先では3人の男に狙われてます。そして、そのうち一人は、私が好きな人。面白い事になっているのだ。その話は後においておくが。
彼女は話を受け入れる事に疲れている。そして、変な期待を持たれたり近づかれたりすることにも。あの子は本来強くないのだ。私と同じように、依存できる何かを探している。恋愛をすることによって、確固とした存在を確認したがる。そういう子。強く見せながら、中身は少し、儚い。だからこそ、不本意に近づかれたりしたくない。それを自分でも分かっている。分かるまで、きちんと考える。頭を使っている。




「誰でもいいんだよきっと、自分の話を聞かせるのは。」
「私は自分勝手なの。自分のことで悩んでるの。」
そう、言う。けれど、彼女は本当に自分のことだけで悩んでいるのか。そうじゃなくて、きっと、近寄っていけない事が、そして相手を重たがる自分が、嫌なのかもしれない。そう感じた。それはきっと、優しさからでた気持ちで。
あの子には壁がある。うんと厚い壁が。実際あの子も、本心を全て話せる友達がいない、と、言う。そして私にも話してはくれない。彼女が確実に思っていること。最後の最後までは。
こんなに素敵なのに、どうして隠すのだろう。そして、あの子が抱える根本的に自分を否定する考えは、どこから来たんだろう。存在を誰かに認めてもらいたいという、あの感覚も。それなのに、傍目には、うんと格好よく見せてしまう。あの子の奥の弱さは、すごく惹かれるし、あの子の外の強さには、すごく憧れる。




しかし、今日ひとつだけ、あの子の壁を抜いた。
言い寄ってくる三人の男の中で、一番の候補はだれ?その質問に、あの子は私の好きな人を選んだ。本当のことをいえるように、私はもうどうも思っちゃいねぇよ、みたいな態度を示したから、本音を言えたのだろうけど。
するすると、諦めなきゃ、という気持ちが浮かび上がる。彼女は実際に彼を選んで、連れ添う事はしないと思う。けれど、彼女がそれを選択して、幸せになれるのなら、遠慮とかせずに走れるように、諦めてスペースを空けたいと思う。前私がさせてもらったように、あの人に思いっきり抱きつくのも、悪くないんだろう。




「あー、私こんなに色々話すのシホちゃんくらいだよー。」
そう言われた時の、うれしさったら、もう。たまんなかった。
ふたりでどんどん明けていく空を見ながら、変な脱力感と眠気に襲われて語り合うのは、すごく、楽しかったんだ。




ものすごく、彼女に嫉妬してる自分は、いる。でも、私は、彼女の素敵なところを見ずにはいられない。そして、幸せを祈らずにはいられない。きっと私は彼女を狙う男の中のひとりに入れるんじゃないかな。ってくらいに、あの子に好感をもっているかも。