前回の日記に書いたような感覚が戻りつつあります。おかげで、目の前にある世界が違って見えます。単純だなって思うけれど。なんか頭がリラックスした状態になってきました。



きっかけは、川原のベンチでいつもハーモニカを吹いている山口さん。
大学の真横に流れている川のベンチで彼はいつもハーモニカを吹いていて、超絶上手い。ものすごく上手い。入学してすぐにそのおじさん(もといお兄さん。おじさんっていったら怒られたんだ)に興味を持って、なるべく川原を通って学校に行くようにしていた。そんな風にしているうちに、顔見知りになって、挨拶を交わすようになり、少しづつ話すようになっていきました。
数日前、またそのお兄さんに会った。
「横で一服していいですか?」
そういうと、優しい目をして「いいよ」と返してくれた。
山口さんは36歳、ハーモニカを始めたのは30歳。
「ひとつだけ、これっていう特技があるのっていいじゃん。毎日ポケットにこれ入れてさ、吹き続けたら、10年後にはすごく上手くなってるぞって、想像してさ。」
そう、笑いました。
私は、なんだか、ものすごく感動して、ふと、色んなものが見えた気がして。
明日を、その次を、一年後を、そして十年後を、大切にしている。それは、今まで私が放棄していた事だ。そう、本当にそう感じた。それは、老人みたいに、明日がないみたいに、ただ流れている毎日でしかなくて、そんな毎日を大切にできるわけがなくて。
山口さんに、今まであった辛かった事を、さらりと話す。
「若いんだから、まだやり直しはいくらでもきくよ。」
そういわれて、そうだな、私はいくらでも生きていける。そう思えた。
明日を大切にする人の言葉は、何か独特の力がある。そういう人の演奏は、軽やかで、楽しくて、でも何か、何か表現できないものがつまっていた。
ハーモニカの吹きすぎで、少し内側に入ってしまっている唇。10年後の演奏も聞きたい、そう、思った。10年後に生きている私を思い浮かべた。