バイトが終わった後のビール。真横に好きな人がいる。けれど、その人はもう私が抱きついたりキスしたり出来ない人になってしまった。
一度だけ、そういう時間を過ごした。妙に鮮やかに残っている感覚。胸板硬かったなぁ、とか、優しかったなぁ、とか。その時の天気も、道の風景も、色んなことが目の裏に焼きついている。
けれど、私が怖くなって逃げ出したのだ。彼は彼で私なんて本気じゃないから、別にいいだろうけど。私は突き放しておきながらも、ずっとずっと考えている。その人と一緒にいられた、あの時の嬉しさとか、切なさとか。
今後、私が、彼に触れる事はあるのだろうか。全てが曖昧なまま、終わってしまうのだろうか。何も分からないけど、とにかく、横目でちらちら彼を見ながら、逃げ出した自分の愚かさを恨むのだ。
それと共に、この人に触れたいなぁ、とも。