海と毒薬を読みきって、一息つかずに梶井基次郎檸檬を読むけど、最高。なにこれ、何でこんなにも鮮やかなんだろう。


―食ってしまいたくなるような風景に対する愛着と、幼い時の回顧や新しい生活の想像とで彼の時どきの瞬間が燃えた。また時どき寝られない夜が来た。寝られない夜の後では、一寸したことに直ぐ底熱い昂奮が起きる。その昂奮がやむと道端でもかまわない直ぐ横になりたいような疲労が来る。そんな昂奮は楓の肌を見てさえ起こった。―
梶井基次郎城のある町にて』より抜粋。