ムーミンに対してずっとメルヘンのイメージを抱いていた。けれど、思い返すと、そういえば怖かったな、と思う。
けれど、なんて皮肉で苦しくて、間違っていて本当の言葉たちなんだろう。皆が沢山欠陥を抱えている。完璧なヒーローがどこにもいない。だから、子供には読ませたくない。だからこそ、小さい頃にもっとしっておけばよかった。





「わしのようすを気にしてくれるものはだれもいないのか」
と、じゃこうねずみがききました。
ムーミントロールは、正直に答えました。
「ありません。ぼくたち、ほかにいっぱい考えることがあるんです。だから、あんたのことを考えるのなんか、ぜんぜんよけいなことだと思うんです。」


「スニフ、きみはニョロニョロを近くで見たことがあるかい。あいつらは、ものもいわないし、ひとのことを気にしちゃいないんだ。両手をふりながら、ずっと遠くをにらんで、どんどん進んでいくだけなんだよ。パパがいってたけどね、ニョロニョロたちは、どうしても思ったところへいきつけなくて、いつもどこかをあこがれてるんだって。」


(『ムーミン谷の彗星』より抜粋)