久しぶりに高校の友達に会った。よしえ、だ。仲良しだった。
でも、いつでも彼女と喋っていると、不思議な感覚がする。本当に彼女と私は仲が良いのか、彼女の中で私は何なのか、よく分からなくなる。彼女と私の会話はいつも一方通行だ。私が何か話すわけではない。彼女が常に話し続ける。
彼女の話す事は、いつでも現実だ。自分の中に入り込んで、からまって解けない気持ちについての話は、一切無い。新しい生活について、家族について、少しだけ近づく恋について。その話は、全て、私には縁の無い明るさや、凡庸さであふれている。内容が凡庸という訳ではない。ただそこにある、彼女の気持ちが凡庸なのだ。彼女にも浮き沈みはある。けれど、どうしてかよく判らないほどに、絡まって動けない気持ちを抱かずに、その動けなかった所に転がっている不思議な世界を見ずに、乗り越していく。それは、素直とは少し違う出来事なのだ。
私は、自分の話をする事もなく、いつだって彼女の話を聞いてきたし、もしまた会うことがあるのなら、これからもそうであろう。彼女の現実の話を聞きながら、頷きながら、笑う。一方通行の、奇妙な距離感。私はよしえの世界に入り込むが、そこでくつろげもせず、正座して周りを見渡すふりをしている。
この対話には、一体何の意味があるのだろう。意味が無いのがおしゃべりなのは分かる。けれど、彼女と私の過ごしてきた期間にそぐわない程、話は常に『おしゃべり』にしか成り得ない。数日で互いを探り合って、理解しようと必死になる『会話』を重ねられる相手もいる。
私と彼女の付き合いはもう四年目だ。私はいつでも、彼女のおしゃべりを聞き、違和感を感じる。どうしてこんなおしゃべりをする相手に、私を選んだのだろう。ただの日常の報告をする相手に、何故こんなに絡まった人間を選んだのだろう。そして何故、彼女は私を時どき恋しがるのだろう。私を特別な立場に置くのだろう。私には分からない。
けれど、よしえの楽しそうに話す顔を嫌いになれないのだ。