ジョゼと虎と魚たち

救い合えた人が離れていく。
冬の暖かな画面と、くるりの音楽が大好きで、のほほんと見ていたのに。どうして妻夫木も池脇もあんなに暗い何かを予感させる、演技が上手いのだろう。少しだけ空く空白や、時折見せる苦しい表情が痛かった。「もうこれ以上は無理」っていう、あの空気。少し寒くなった。
突然押し寄せる涙の描写は上手すぎた。友達の声より、雑踏が耳に付いて離れない。笑顔が作れない。苦しくて、泣く以外できなくなる。
「僕が逃げた。」
その潔い言葉は、自分を責めている。だからこそ、立派だけど、少しだけ許せない。
妙なファンタジーじゃない。本当にリアルだから、息が苦しかった。