バイトもやっと慣れてきた。今更かよもう一ヶ月は経ってるぞ、と自分でも思うのだが、持ち前の不器用と、今まで甘えられる環境に入り浸っていた事で、一種の社会デビューには物凄い戸惑いがくっついてきたのだ。
とにかく、自己責任と、誰の享受もない環境だ。初めて長期バイトをやったのだが、とにかくその店は忙しかった。全然想像もしていなかった位忙しい。そんな中で、しょぼい私は戸惑う。誰かに教えを請うけど、忙しいのでロクに教われない。新人のバイトなんかよりも、今いる客のほうがよっぽど大事なのだ。
不思議な世界だ。これからずっと一緒に働く人間よりも、いずれ帰ってしまう、そしてまた来てくれるかどうかも分からない人間に対して誠心誠意こめて接客しなければならない。今までずっとディズニーランドの世界観の徹底を心の底からバカにしていたが、接客という観点からすれば、あれは理想の姿だったんだ。誰の心も不快にさせず、心地の良い世界観を崩さない。それは、今まで私が受けてきたサービスの中にも含まれていたんだろうと、やっと実感した。
沢山の店のキャッチコピーに、「お客様のために誠心誠意尽くします!」みたいなものがある。今まで私はそれを疑ってきた。「なにさー、お前等バイト代貰ってんだろー。」と思っていた。けれど、なるほど分かった。金のためじゃない。完全に客のためなのだ。料金を払う客のために責任を負うわけじゃない。何故だか分からないけれど、心地の良い時間を味合わせるために、私たちは奮闘しているんだ。とにかく、客が一番。おお、恐ろしい。。
そんなわけで、何も教われない状況で、不器用な私は他の従業員に頭を下げながら毎回のバイトをこなしている。なかなか慣れなかったけど、やっと動きも理解できるようになってきた。そして、とにかく笑い方も覚えてきた。そして、なぜか私まで客の素晴らしい時間に貢献できるようにぱたぱたと走り回り、ミスをしては凹むのだ。